「青森鞍馬・青森市

 桔梗庵の主人から「青森の蕎麦もがんばっているよ」といわれていたので、ねぶた見物のついでに味わってみることにした。紹介されたのは二軒だが一軒は時間的に無理なようなので情報誌から自分で一軒選んだ。それが「青森鞍馬」である。選んだ理由は、東青森駅の近くなのでJRで移動できること。私も美味しいと思った東京西荻窪の「鞍馬」で修行した蕎麦屋さんとのこと。「青森鞍馬」という名を名乗っているということは謙虚ながらも自信の表れであろうこと。夕方開店の時間が5時でちょうどよかったことである。 
 店前に着いたのが5分前。5時丁度に暖簾が出て、もりそばを頼んだ。店内は椅子席で12、3席、小上がりに8席くらいでこじんまりしている。デザインはモノトーンで直線と曲線がアレンジされ、そういえば、暖簾もコンクリートのアーチにかかっていたしいわゆる和風モダンである。しかし、店の大きさ駅に近い立地など西荻窪「鞍馬」を相当意識しているように思える。、
 一口すする。うまい。蕎麦である。香り、舌触り、しっかり蕎麦である。おもわず辛汁なしでこのまま食べたいと思うほど蕎麦である。三口辛汁無しで食べたのははじめてである。辛汁は醤油の香り十分の江戸前よりずっと北海道のしょっぱさに近い味がする。「鞍馬」のはもう少しきりっとしていたと思うが、醤油しょっぱさが好きな私にはいい。山葵はもう少し辛いほうが蕎麦の甘さが引き出されるのではないかと思った。蕎麦湯も濃くて最後の一口まで蕎麦を楽しめた。
 昼時はわからないが夕方のこの時間は主人独りで、接客から釜前まで切り盛りするようだ。老夫婦と孫連れが後から入ってきた。その男の人が、冷がけそばを頼んでいた。食いたいと思ったが、JRの時間も気になるし、あきらめた。支払いのとき「美味しかったです」とだけ伝えて店を出た。
 東青森駅のホームがすぐ見え、跳人の格好をした女子高生らしき一団が笑い転げていた。