横丁・青森市

 東青森からの電車が青森駅に着いたのが5時40分頃。探すのに時間がかかるかな?と思ったので一度地番をたずねたけれどその人は店もわからず丁目しかはっきりしなかった。青森駅前西側…古い繁華街だろうと思わせるアーケードの町並みである。そこから入り込む路地が幾筋もありありそこに数軒飲み屋もある。丁目はわかったが地番表示を出していない家が多くて、近づいているのか遠ざかっているのかわからない。こういう古い所は、きっと駅が中心だろうと見当をつけて歩き出したら案の定「横丁」の看板を見つけることができた。5時55分予定通り進行している。暖簾をくぐった。
 お祭りである。居酒屋である。蕎麦前がやれるのはいい。青森の地酒と思ったが「桃川」はメニューに無い。「田酒」を頼む。「みず」のおひたしで一本飲み、焼き鳥で一本飲んだ。焼き鳥は老女将が専門焼いている。調理場にいる人が昼は蕎麦を専門に遣っているのだろう。夜は手打ち蕎麦を楽しめる居酒屋になる。焼き鳥が出てきたときに鴨汁蕎麦を頼んだ。もり蕎麦はなく、ざるしかない。そばにのりがあるのは好きではないので、鴨汁蕎麦にした。
 大き目の笊にボッチもりのそばが銚子とグラスを片付けたカウンターに置かれた。一口すする。美味しいそばである。すこしぱきぱきっとした歯切れのいい蕎麦である。口が酒を飲んだせいかそばのかおりを感じてくれない。しかし噛んでいると味が立ち上ってきた。鴨汁は醤油の味がしっかりしたしょっぱめである。そこに鴨の油と香りが浮かんでいる。そばをあったかい鴨汁に浸して食べるとそばの食感が引き立つ。すこしもそっとした感じである。なんともいえない。そういえば紹介してくれた桔梗庵の蕎麦に似ている。店を出るとき、カウンターの隣で飲んでいた常連客にまで「また来てください」といわれた。青森にきたらまた来よう。
 ねぶたの夜を迎えようとしている青森。6時50分。歩道に陣取った観客の後方通路を私の座るパイプ椅子に向かって歩いた。ほろ酔い。そばっ腹。