アンナプルナ・ダウラギリ展望トレッキング(7)

takasare2007-04-09

4/5 ゴラパニ〜ヒレ
 ゴラパニまで直角三角形の二辺を三日かけて登ってきた。その斜辺を一日半で下る。今日のコースの高度差は1300Mにもなる。今朝のプーンヒルからのくだりも含めると1500Mになる。
 下りは好きでは無い。登りは体力的につらいが、下りは体力的には楽な分精神的な緊張を強いられるからだ。
 今日の下りはこの地に住む」人々が長い年月をかけて作ってきた敷石の階段道である。階段道は段差を目で感じて足を置く位置を常に意識していなければならない。目を悪くしてから微妙な遠近感のずれがある私にはいっそうの緊張を要求される。プラス転んだら、つまずいたらと臆病さが拍車をかける。もう一つ石段の段差は一定でないので油断すると膝に響く。ストックを使って衝撃を和らげながら足を下ろす。と言うことはストックを突く位置にも留意しなければならない。
 何より恐ろしいことは、その緊張に飽きてぼんやり足を運びおろしてしまう時だ。集中力の持続を最も不得意とする私には十分考えられる。私が怪我をしたらかが背負うんだろうなと思いながらシェルパの背中を見てしまった。あわてて首を振って怪我幻想を振り払い、気をつけながら降りていった。
 1時間ほどで300Mほど下がる。石楠花が咲き終わった高さになり花は見られない。登ってきた道でもそうだったが、今までの集落や家がロッジを中心にしていたのに対し2500Mの高度になると民家が増えてきた。家の上下には段々畑が斜面にへばりつくように綺麗な模様を作っている。当然暮らしのあれこれも見えてくる。
 臍から下、垢だらけの尻を出して幼子が泣いている。家の戸口で母親が叱っている。子どもは泣きながら親に近づいて行く。母親は叱りながらも子どもを膝にまとわりつかせている。道から二段くらい上の畑に6〜7人が家族で旗仕事をしている。傍を通りかかった5,6年生くらいの男の子が真新しい本を小脇に抱えている。頼むと快く見せてくれた。開くとイラストが色刷りで描かれていてその下に英単語が書かれている。最初の絵は狐が座っているポーズで、FOXと書かれていた。学校で使う英語の教科書のようだった。嬉しそうだった。集落の辻で、座り込んだ村の女性が、石をハンマーで砕いて砕石を作っていた。飛び散らないようにゴム板の輪の中で砕いていたが、ゴーグルとかはしていなかった。50頭近い山羊の移動させる山羊使い。ポーターが二十羽近い鶏を駕篭にいれて運んでいたし、十頭くらいのロバの列が穀類を運んでいた。高度が低くなると物資も豊かになる。
 ウレリから斜面を真っ直ぐに近い降り方で下っていく。少しジグをきってあるのでそれほど恐怖を感じないが、どんどん降りていく実感はある。途中、昨年十月雨季に崖が崩れ19人もなくなった現場に沿って下った。大きな岩があったところで一ヶ所曲がったいるだけで、真っ直ぐ崩れた後が生々しく残っていた。慰霊碑はあった。道は修復されていたが家やロッジは廃墟になっていた。防災措置をとるということではなく危険は避けるしかないのだろう。その崩落跡と寄り添うように谷底まで降り、吊橋をわたる。下りの山場は終えた。少し歩いて最終ロッジ泊地ヒレに着いた。