GORELIGHT(1)

takasare2006-08-24

 3年前、学大山の会の夏山行でトムラウシ山に行ったとき私のテントは自転車ツーリング用の1万円強のものだった。小さいながらフライシートも付いている水色、一人用のものである。山では自分のことは自分で…だからそれを南沼のテン場まで上げ、それで寝た。登山口を出るころは快晴の天気だったが、夕方南沼に着くころは小雨になっていた。とにかく急いでテントを張った。張り終わったら青空が見えてきたので緊張も解け、南沼のほうへ散策に出かけたりした。しかし、帰って来る頃にはまた雨が降り出し、風も出てきた。そそくさと立ったままでレトルトの食事を済ませそれぞれが自分のテントにもぐりこんだ。さっきの晴れ間に気が緩みペグの打ち込みが甘かったのではないかと思ったがうつらうつらに負けてしまった。雨は小雨だが、風が強くなり、テントに風と雨がぶつかってくる。その音で目を覚ました。ヤバイ、ペグが抜けそうなのかテントの固定が緩んでいる。テントの中で急ぎ雨具を着て外に出た。他の人のテントはしっかりと地面にへばりついている。私は雨の中ペグを打ち直し、念のため大きな石をペグの上に乗っけた。Yaさんのテントから「どうした?」と声がかかったが「だいじょうぶ」と答えてテントに入った。だいじょうぶではなかった。フライシートが中途半端なため、吹き付ける風にあおられてテントを持ち上げようとする。私は、脱ぎかけた雨具を着たままザックの口をしっかり締め後は天に任せた。
 強い風は石の下からテントを引き出し、ペグを抜いてしまった。一体型のテントはただの袋と化しかろうじて私の重みで飛ばされずにいるだけとなった。やがて、私の運命を任された天は稲妻と、雷と豪雨を持って応えてくれた。
 私は時々、幽体離脱のように自分の状況を20mくらい上空から見下ろしていることがある。大雪山塊の真っ暗な中、走り回る稲光に浮き上がる色とりどりのテント。その中で水色の芋虫のような私がもぞもぞとうごめいている…。
 ザックを膝の間に抱え一睡もできずテントにくるまれて朝を迎えた。天は他の人と一緒に朝は与えてくれた。山の会の人たちに「これはやっぱり山の上では(いざというとき)使えないなー」と言われた。