花の稜線を4200mの無名峰まで(1)

takasare2006-07-17

 日隆(リーロン)の街から直接、三人くらい横に並んで歩けるような道が始まっている。長く大きく3回ほどジグを切ると、40分で広い大きな尾根に出た。一面白いイブキトラノオが咲いている。足の踏み場も無い咲き方だ。第一のストゥーパが立っている。足元から緩やかに登っている尾根に沿って目をやると、いくつかのストゥーパが標識のように立っていてその向こうに今日の目的4100mの無名峰が青く見えている。その奥に連なる二、三、四姑娘の頂上は見えない。今日は、最高到達点4100m、900mの高度差の克服ができるかどうかの歩きになる。
 4000m以上の経験はエヴェレスト街道シャンボチェ4100m,ランタン谷のタルチョピーク4300m前々日の巴郎山峠4500と三回あるが今日はどうだろう。バスで一気に高度を上げたためか昨日まで後頭部に頭痛があったが今日はそれも無い。それでも用心してゆっくりゆっくり登り始めた。
 尾根は巨大な獣の胴のように大きくなだらかに横たわっている。そこに広がる大花野はその動物の皮膚のように息づいている。その中に薄茶色の道。段差が無いしどこを歩いてもいい。どこを歩いてもいいけれど花を踏みたくないから道に足を置く。目を動かせば花が目に入ってくる。みんなは目に止まった花を一つ残らず持ち帰るかのようにカメラを向けている。私はしゃがんで花を撮るのがおっくうになってきた。しゃがむ、手振れしないように息を止めシャッターを押す。それだけで立ち上がるとクラッとする。スーッと長く息を吐き、ハッハッと息を吸う私なりの呼吸法で肺に酸素を送る。すぐ楽になる。第三ストゥーパ3800m辺りでは一回息を整えると30歩は歩けたが、花を撮る余裕は無くなった。今回の旅行で私が自らに課した役割行動はスナップ写真を撮ることだ。スナップ写真を撮るために立ち止まる。一見何事も無いようにカメラをあちこち向けながら、スーッ、ハッ、ハッと息を整える。