四姑娘山…「四姑娘山」

takasare2006-07-11

 今回旅している中国四川省の7月は雨季にあたる。だからこそ花が豊かに咲く。雲が多く雨が降りやすいのは当たり前であろう。とすれば四姑娘山が見えなくても仕方ないということになる。そんな覚悟で日本を出発したものの、その日の今日、朝から霧がかかり3000m登ってもまだ雲の中だとやはり気持ちが萎えてくる。霧の中だったけれど、巴郎山峠で花は満喫できた。工藤さんは「もう満足だ。ここで帰ることになっても悔いはない」とまで言っている。私はどちらかと言うと四姑娘山が主目的だから、これで山が見られなかったらきっとジェラシーを覚えるに違いない。などと思いながら4500mの峠に着いた。
 峠の日隆(リーロン)側は晴れていた。真正面の山が明るく輝いている。まとわり着いている雲は少なくないけれど白い。足元に広がるカール状の斜面を大きく蛇行して舗装道路がその明るさの中に伸びていっている。期待が膨らんだ。
 峠を降りてしばらくすると、ガイドの王さんが「あれが四姑娘山です」と右手の稜線のわずかなくぼみに頂上を見せた雪の峰を教えてくれた。しかしそれはあまりに小さかった。「おーっ」と上がった歓声は四姑娘が見えたという感激ではなく、晴れているから見えるかもしれないという可能性の高まりだった。
 少し見えたと言うことで目星をつけた稜線をバスが回り込んだ瞬間、バスのフロントガラス一杯に四姑娘山が広がった。一斉に「オーッ」と感激の声がバスの中に満ちた。
 白い衣をまとったなで肩の女身が幼子を迎える様に両手を広げていた。その裾の辺りに二日後私たちが歩くなだらかで広い尾根が大姑娘山、二姑娘山、三姑娘山、四姑娘山へ続くように登っていた。
 「もうここで帰ることになってもいい」と思った。