四姑娘山…「巴郎山峠」

takasare2006-07-10

 早朝7:50に成都を出発したバスが巴郎山の最初の花園にツァーの人たちを下したのは15:30
を過ぎていた。その間3000mを登っている。後頭部が重痛い感じがするし肩が凝ったようでもある。どこかで俺は高山病になんかならないぞと威張りたいのか、高度障害とは思いたくないふしがある。現地ガイドの王さんが「急がないこと」「走らないこと」と注意してからバスから下してくれた。
 森林限界をだいぶ前に超えていたし、大きな斜面は道路が切り取っている以外は、草や低い潅木で覆われていた。道路から数歩登ってすぐ、その草の中にたくさんの花が咲いているのが見え始めた。その目で見ると、動かす範囲全ての視界から溢れるほどに花が咲いていた。数種の花が群生しているのではなくまさに百花が咲き乱れているのである。そして百花の色は百色であり、高山ゆえかその色は鮮やかであった。
 いつもは花の種類同定に逡巡の無い工藤さんが、他の人の質問に「たぶん…」とか「…の仲間だと思います」とか、果ては「わかりません」などと答えている。しかしそれで困っているのではない。さすが科学者「見たことが無い」「すごい」「なんだろう」と夢中で写真を取り捲っている。その表情は大好きなものに出会った子どもの顔になっている。工藤さんが花に興味を持った少年の頃の顔だろう。とてもいい顔だ。坂口さんは、広く歩き回り、山谷さんは2台のカメラを駆使して写真撮影に余念が無い。ただ越田さんは高度のせいか不調で動きが少ない。女の人たちも、素晴しいカメラを持ってマクロ撮影に挑んだり、花に囲まれて写真を取り合ったりしている。
 次の花園ではここにしかないと言う青いケシに歓声を上げていた。赤いけし、黄色いけしも含め少し時期としては遅いようだったが、霧模様の礫の中に点々と咲く青いケシは、種類が違うのではないかと思うほど透明感のある青、水色に近い青、紫と言ってもいい青、ビロードのような光沢のある青と全てにカメラを向けたくなるほどだった。
 たくさん咲いていたので、このツァーのコピー「幻の青いケシを求めて」からうかがえる希少性は感じなかったが、ここまでの距離感、3700mの高度、そして押し寄せる霧というシュチエーションが「幻」性を強く感じさせた。
 花が人を無邪気にしている。それほどの花の種類と数と色だった。