蝦夷松山(2)

  頂上は柔らかな日差しが岩を温めわずかな平らな部分に腰をおろし、その温みを背中に感じる。誰もいない。下のゴルフ場で人が動き、たまに音なども聞こえるが山上の雰囲気を損なうものではない。握り飯は二つ持ってくるが、一つ食べて我慢できる。我が家でだらしない昼食を食べているときは食べたあとでもつい冷蔵庫を覗いているが、山を歩いているとザックの中にお菓子や飯が残っていても我慢できる。これも、山歩きの特典の一つだ。いつもの卵焼きとウインナーと浅井さんからのアスパラのベーコン巻きで美味しい昼飯になった。山谷さんにベーコンまきをあげ、チーズをもらって食べながら下を見下ろす。赤い芽吹きが春紅葉となり、新緑の山裾のアクセントになっている。遠く千軒の雪の峰や矢越岬、当別丸山が海峡の照り返しの白光の中に墨絵のグラデーションとなって浮かんでいる。近景は、これも白光の巴湾と逆光の函館山だ。今日は雁皮へは行かずここから下りる。よじ登りはいいが、下りのロープ場はスリルが伴う。筋力が体重に見合わないから、下りることが落ちることになりかねない。落ちたらこんな所でも命に関わる。でもその緊張が楽しい。帰りも筍一本くらいは…と思ったが、見つけられなかった。
 十字路のところからは、ゴルフ場と反対の沢を辿って下りることにした。昨年秋、赤川へ続く道がないかと探り歩いた道である。踏み跡でしかつながっていないことがわかり、車を置いたすぐそばにつながっていることがわかっているので同じ道を帰らなくてもいい。車が通れるような道はやがて人一人の道になる。 通る人が少ないのか草がかぶりかかっている。ツバメオモトやスミレが可憐な姿を見せてくれる。やせてはいたがアイヌ葱もあった。途中から立派な林道に出る。そこの水小さな水溜りにはサンショウウオの卵がとぐろを巻くように水中に浮いていた。
 陣川温泉(年中無休)で汗をながし、5月の好天を満喫した。