「出石そば」舞鶴

 夕方舞鶴に着いた。終わりかと思うと運転がいやになり、夜8時までと言う駐車場に車を入れてしまった。回転寿司でも…と思いながら町を歩くが何も無い。食い物屋に限らずほとんどが閉まっている。人通りも無い。あきらめて駐車場そばにあったレストランにしようと歩いていたら、「出石蕎麦」の看板が目に入った。出石という地名は記憶にあったが、そこに名物になる蕎麦があったとは知らなかった。その暖簾をくぐった。結局、蕎麦である。店の名前は覚えていない
 大きな二合徳利が出てきた。酒は頼んでいない…と思ったがそこにはかけ汁が入っていた。朱塗りのお椀。卵が一つ。小さな器にとろろが入っている。薬味として卸と刻み葱。そして五枚の小皿に盛り分けられた蕎麦が出された。楽しい。カメラを持っていなかったことが悔やまれた。
 お椀に卵を溶きかけ汁を入れ、一枚目の小皿の蕎麦をそのお椀に入れてすすりこむ。残念ながら蕎麦は今一つだけれど楽しんで食べられる。とろろで食べ、おろしで食べ、蕎麦だけで食べた。かけ汁が徳利で出される意味がわかった。かけ汁の味は当然薄味で、天つゆに近い。蕎麦湯は越前のような湯のみ茶碗ではなく、湯桶で出てきた。
 蕎麦を食べ歩く旅にふさわしく、終わりの終わりに望外の蕎麦に出会えた。蕎麦の世界は広い。