「しん馬」金沢市

takasare2006-01-24

 地番と地図をたよりにここぞと思う辺りで「そば」の幟を見つけ、見つかったと思ったが無い。見つけたとき二度もその前を通り過ぎていた所にあった。ごく普通の住宅に「しん馬」と染め抜いた大きな布がかかっていた。切妻の壁に自然板に「しん馬」と書いた看板もあった。車だと見えにくかった。せいぜい二台分の駐車場にXトレイルを入れ、玄関を開けた。靴を脱いでお邪魔するタイプの店である。ごく普通の家の大きさなので奥行きは無い。
座卓が三つほど、若奥さんが応対してくれる。三種類ほどの蕎麦をいろいろな組み合わせも含めて注文できるようだが、私は挽きぐるみのもり蕎麦を頼んだ。
 待っている間、卓の上のノートを開いた。客に思ったことを書いてもらっているノートである。その一つ一つに主人がコメントを書き添えて返事をしている。そのどれもが客の好みに合わせる風は無く、自分のこだわりにこだわり続ける返事になっている。こだわることはいいことである。食べる側からすれば、そのこだわりが自分の好みに合わなかったら二度と行かなければ良いだけだから。同じ卓上の印刷物を見ると、この地域の若い蕎麦作り仲間がお互い切磋琢磨して会を作っているようだ。それに支えられているこだわりなのだろう。
 蕎麦が運ばれてきた。少し太めのしっかりした麺が白っぽい皿の上に盛られている。一箸つまむと、挽きぐるみだけあって香りが強い。舌触りもいいしこしがあって味をよくしている。薬味にわさびがない。これもこだわりなのだろう。代わりのように辛味大根がついている。これで食べてみた。辛味大根で蕎麦が甘く感じてしまい蕎麦の香りが飛んでしまっている。少しから口のつけだれだけでおいしく味わった。蕎麦湯は重く大根おろしを入れて味わった。おいしい。蕎麦クッキーときゃら蕗の甘辛く炊いた小皿がついた。
 かけそばもあったので頼んだ。やはり関西風のかけじるで蕎麦は香りも舌触りもよくおいしいけれど、やはり不満をかんじてしまう。
 昼前訪れた「くら」とはいろんな意味で対照的な店だった。街中と郊外、機械打ちと手打ち、客と折り合いをつけてきた老舗と若さとこだわりの革新性…どちらも味わえた。