「渓流荘」(2)五箇山

takasare2006-01-22

 囲炉裏端もどこも雑然としていてなんとなく腰が落ち着かない。主人は表の水車の辺りでごそごそやっている。打つのは主人らしいが釜前は女の人である。濡れ濡れの水切りの悪い蕎麦が出てきた。挽きぐるみの田舎蕎麦である。香りはあるがつるつるのうどんのような引っ掛かりの無い食感に不満が残る。たれは薄味で量が多い。たっぷりつけて食べなさいと言うことらしい。水が切れていないため、ますます味が薄くなった。
 サラリーマンらしい三人連れが入ってきた。私の車のナンバーを見たらしく、話しかけてきた。どうやら富山市の時間に余裕のあるサラリーマンがここまで蕎麦を食べに来たらしい。その人たちと囲炉裏を囲んでそばをすする。絵としては雰囲気があるかもしれない。
 かけそばもメニューにあるので注文した。この蕎麦は、かけのほうが味や香りが引き立つようだ。しかしかけ汁が薄味だ。醤油色の濃いかけ汁と色の薄い関西風のかけ汁の分水嶺富山県にある。(以前日本海の駅の立ち食いそばを食べながら南下したときの仮説が内陸でも立証された。)もう一つ、岐阜から山を越したら「かけそば」がメニューに復活してきた。醤油の香りが強い北海道が懐かしくなった。蕎麦湯を頼んで出してもらった。薄いたれなので蕎麦湯は合わなかった。蕎麦そのものはおいしいが、口に入るまでの仕上がりに不満を感じる蕎麦になってしまっている。表の主人が釜前にいて、客の顔を見るだけで違ってきそうな気がする。店構えだけでなく蕎麦としても中途半端な感じをもって店を後にした。