「安曇野・翁」(2)池田町

takasare2006-01-10

 ざる蕎麦800円を頼む。白い調理服姿の若者が応対してくれる。今までの店はほとんどが女の人が多かったので新鮮に感じる。薬味皿にはわさび、大根おろし、さらし葱がのっている。たれは中ぶりのとっくりに半分ほど。蕎麦猪口には入っていない。山に見とれていると蕎麦が来た。見ただけで期待できる。期待を刺激したのは見た目だろうか香りだろうか。高橋邦弘さんの蕎麦を食べてみたいと思ってから数年立つが高橋さんは広島に行ってしまい益々遠くなってしまった。今回の旅の大きな目玉の一つが、高橋さんの教えを受けたこの安曇野「翁」であり、今そのそばを目の前にしている。
 一箸麺を啜る。蕎麦の香、舌触り、喉越しをひっくるめた蕎麦の味がしっかり伝わってくる。少し緑がかった蕎麦を、わさびで食べ、わさび無しで食べる。どちらもうまい。角が立っていて先入観ほど辛くないたれが丁度よく絡む。蕎麦が舌に存在感を示している。三口目か四口目にはもう次は何を追加注文しようかと考え出していた。蕎麦湯は中重で景色を見ながらたれを残さず楽しんだ。
 二杯目は、この旅ではまった鴨せいろにした。蕎麦が違って出てきた。今度はざるのときよりも白っぽい蕎麦になっていた。ざる蕎麦よりも、香りが弱い気がしたが、中太の麺に鴨汁がしっかりからまっておいしい。信州の蕎麦の極めつけの蕎麦をいただいてしまった気がした。器に残った鴨汁を蕎麦湯で残らずいただいた。目を上げた。また安曇野の盆景パノラマが窓いっぱいに広がっていた。