「安曇野・翁」(1)池田町

takasare2006-01-09

 県道51号線から町立美術館を目指し、初めて翁へ案内する立て札を見つけた。開店時刻である。裏手の砂利地の駐車場に車を停め表に回る。安曇野の盆地をはさんで北アルプスと対峙する斜面に「翁」はあり、その入り口に立つ。県道からけっこう登って来ている。美術館や、公園があって人里離れてはいないが、人家は無い。公共の交通機関はあるのだろうか。あっても一日幾本かだろう。「食いたかったら来い」と言う気概を感じる。そしてそれを「気概」と感じこそすれ「こんな所まで…」と腹が立たないのは、この景色のせいである。素晴しい。安曇野と言う響きにふさわしい町の広がり、その向こうに町から地続きせり上がり青緑に猛々しい峰々。それを盆景のように俯瞰できる素晴しさは、蕎麦を食べに来たことを忘れてしまうほどである。
 店に入る。ここに店を開いた理由がそこにあった。入り口前で見た景色が二方全面のガラス窓でまた見られるのである。座ってそばを待つ間、この景色を見ていられるのである。有明岳、燕岳、大天井岳烏帽子岳爺ヶ岳鹿島槍ヶ岳の峰々が青空を切り裂き、その頂の向こうには、立山黒部ダム黒部五郎岳穂高、乗鞍が続いていると思えばあきることはない。借景と言うにはあまりにスケールが大きい窓である。この景色を見せるからには蕎麦がうまくないはずがない。もり蕎麦を頼んで待っている時間はまさに至福のひと時となる