「たかさわ」信濃町

takasare2005-11-24

 一茶の故郷信濃柏原を過ぎて長野県と新潟県の県境に「たかさわ」はあった。地方道から県道109号線に乗りその道路際にあったのでなんなく見つけることができた。県境すなわち山の中である。私のスキーの揺かご妙高赤蔵倉高原は峠を越えた斜面にある。松坂先生に抱きかかえられて降ろしてもらった、あの日が懐かしい。10分もあれば行けるだろうが、今回は「蕎麦」とばかりにたかさわの駐車場に車を停めた。火曜日の午後、この山の中それでも客がいる。自分のことは棚に上げて蕎麦好きにはあきれてしまう。
 2時間前に入った「そばの実」とはうってかわってここはまるで飯場である。木造の店にプレハブを付け足したらしい。木造部分には今入れていないようだ。土間のままの店に会議用の長机が何本か並べられている。建物がそんな感じなので、奥にいるお客さんもどこかの工事現場の人が昼でも食いに来ているように見えてしまう。私の隣では若者のグループがそれぞれの物を食べている。蕎麦を食べていない人もいる。服装の感じからドライブツーリングの途中らしい。山の中の蕎麦の店として知られているのに、ラーメンが似合いそうな若者がいろいろなものを食べている姿は少し違和感があった。偏見だろう。その他の年寄り夫婦、サラリーマン風の男、中年夫婦がいた。
 「今日は寒いせいかあったかいものを注文される方が多くて、まだあるよ」時間から見てあきらめていた十割蕎麦を頼んだら、これも、飯場の飯炊きおばさんに見えるおばさんがやさしく応えてくれた。見回しても何もない。きっと夏の間だけの峠の茶屋のつもりだったのが、蕎麦の評判がよくなって間に合わなくなったんだろうと思う。調理場との境のカウンターに飯場のやかんが電気コンロにのっかっている。その上に「そば湯」と書かれた短冊が揺れている。そば湯はセルフサービスらしい。蕎麦は香りが良くとても美味しい蕎麦だった。この山の中なのに評判になるだけはある。なにより舌触りが抜群にいい。釜前は女の人らしいが茹で上がりもしっかりしていた。ちなみにこの十割蕎麦は1000円で値段の麺では今回の旅では最高値だった。
 蕎麦湯を汲みに行った。やかんのそばに割り箸があった。どうやらかき混ぜてから注げと言うことらしい
蓋をとってかき混ぜたら濃厚そうな蕎麦湯になった。わさびとねぎとたれで二杯も飲んだ。しっかりおいしかった。