「そばの実」戸隠村

takasare2005-11-23

 戸隠神社中社を出て宝光社を過ぎ、新緑に少し早い山肌を登って行くと開けた平地にそばの実はあった。
少し離れた林間から吟行の一団のような人たちが出て来た。標柱があり、自然林の公園があるらしい。そばの実の駐車場の車はその人たちのものだろう。店の女性が玄関先に打ち水をしている。暖簾がはためいて開店したばかりのようだ。私が最初かと思ったが、何人か客がいる。あの一行の中の何人かとも思う。
こんな山の中、小さな庵のような店を勝手に想像していたが、ぜんぜんちがっていた。太く大きな木材を使って重厚さを強調するような店構えで、黒光りしている。中も、太い立派な梁を見せた天井が高く、店の広さを強調している。道路を向いた窓側の黒い人工皮のボックス席に座り、これも黒光りする卓にキーを置いた。通し窓のようになっているその外は、まだ未整備なのだろうか砂利の空き地が道路際まで広がっている。ただ、道路との境の窪地に水芭蕉が盛りに咲いていた。場違いな人工物とけなげな自然、この店はどう折り合いをつけていくのだろうかなどと考えていたら注文をきかれた。限定20食の霧下そばを注文した。
 揚げて塩を振り掛けた蕎麦がお茶請けに水芭蕉を見ながら待っていた。
 うまい。蕎麦にしかない舌触り食感がたまらない。その感覚の後に味と香りが口に広がる。つけたれは猪口に入っているだけだが、すっきり水切りされているので十分だ。薬味は塩、おろし、わさびが付いているがやはり薬味なしとわさびがうまい。塩は蕎麦の甘さが際立ってしまう。蕎麦が少なく感じてしまった。