「長月」松風町

 新聞の囲み記事で知り、先日確認がてら寄ったら日曜日で定休。昨日函館駅に行ったついでに寄った。狭い入り口狭い店。L寺型のカウンターのこれまた狭い中に調理場がある。メニューはそば中心で蕎麦専門店を目指している心構えが伺える。そのメニューの冒頭に「手打ち手切り100%の蕎麦で…、そば粉80%つなぎ20%の二八蕎麦です…」。また、情報誌の紹介記事のコピーには、「長い間、蕎麦の手打ちをしていたお父さんのそばで覚えたわざと味で…」とかいてあった。店主であるそば職人は女性である。店の中にも三人の女性しかいない。改めて店内を見ると、女性らしい行き届いた清潔さにあふれ、小さな置き物一つにも言葉に変えられるセンスなるものがありそうな感じがする。私の後に、ぴったりの感じの若い女性が一人入って来た。この店のターゲットはこういう人なのかもしれない。
 もり蕎麦を頼んだ。心配は二つ。前にも書いて女性に対する偏見だろうが、一つは茹で過ぎ、もう一つは甘さ。出された蕎麦を一口すすりこんだ。しっかり角が立って口触りはとてもいい。茹で加減は固めでかけ蕎麦に少し期待を抱かせる。香りが今一つだが何度か箸をすすめる内に味も香りも口に馴染んで来た。たれは少し甘めのせいか、蕎麦の中ごろまで浸して食べていた。ワサビは少なかったし辛みも少なかった。ワサビの辛さで蕎麦の甘味を感じる食べ方が私には合っている。蕎麦湯も薄かった。
 かけ蕎麦を追加した。もり蕎麦と同様に丼の中からも匂い立つような香りはなかったが何口か食べているとじわっと感じられた。たれはやはり甘め。かけ蕎麦の丼をレンジで温めていた。女性らしいこころづかいと言うべきなのだろうが、それで「器が熱いですからお気をつけて下さい」といわれるとおじさんは少し興醒めしてしまう。口をつけてたれを楽しむために気をつけなければならなかったから。
 大門地区に本格的な手打ち蕎麦屋。いい所に目をつけた。老舗のまる南と道路一本。この次はどっちに入ろう。