「○南」若松町

 コンサドーレが勝った。祝杯をあげることにして蕎麦屋で一杯と考えた。本町の三与右ェ門に行ったが夕方の開店前、JRで帰ることにして函館駅へ出た。となると「まる南」だ。類焼後の改築でもっと酒を考えた店構えになっている。その点「三与右ェ門」の三次会ねらいよりずっと落ち着いている。
 ふだん車で蕎麦屋に行ってしまうので、今日みたいな車のない日は蕎麦前が楽しめる。酒のメニューの中から値段で中の上「国稀」をえらび、つまみに「蕎麦がきのあげだし」を頼んだ。〆に鴨せいろを頼んでおいて待っている。コンサドーレの雨中の勝利、雨中の観戦。試合のあれこれや、静かな雨でよかったなぁーなどを考えながらボヤーっと待つのも良い。酒が来て、小鉢の蕎麦味噌を舐めながら(JRでの函館駅方面もいいなぁー)などとまたボヤーっとしている。蕎麦がきの揚げ出汁は結構なボリュームでちょっと後悔したが酒にはちょうど合っていた。期待した程蕎麦の香りは強く無かった。揚げたせいかとも思った。
 酒の進み具合に気を使ってくれて、ちょうど良いタイミングで鴨せいろが来た。手打ちではないのだろうが、しっかりした蕎麦だ。さすが老舗まる南の本店である。新蕎麦らしく香りもあるし仕上げがいきとどいていて舌触りがとても心地よい。雨で濡れていた膝上も乾き、酒でほんのりしてきた。そこに冷たい蕎麦を
濃厚な鴨汁にからめて食べると蕎麦食いの幸せを感じる。母娘らしい二人が入って来た。店の人との静かなやりとりが耳を通り過ぎて行く。「たかが蕎麦」が与えてくれる「されど…」の美味しい時間と空間である。