「北の玄庵」尾白内

 国道5号線を森町に入る前で右折、国道278号線との交差点を左折したところにある。店の案内には、「パチンコバンバン向かい」とある。木の色を生かし入り口前に樹木を配した構えになっている。店内も天然木の素材感あふれる一枚板の卓や、輪切りの椅子などウッディなインテリアになっている。
 せいろを頼んだ。出された蕎麦は二八くらいの江戸風の蕎麦で細く切られている。たれは蕎麦猪口にも入っているし徳利にも入って出された。たくさんの量なので薄味なのかと思ったがどうして辛目のタレだった。細くきられた麺なので蕎麦の三分の一くらいにタレをつけ口の中にすすりこむ。冷たい水できちっと締められている。蕎麦の香りがとてもいい。タレの辛さがあ合っているのか、蕎麦が口の中で甘く感じる。わさびや辛味大根などでいろいろ楽しみながら一気に食べた。量もいい。もう少し楽しみたいし追加もできそうだが、かけそばを試したくて我慢した。かけそばは期待通りだった。目の前に置かれたときにすでに香りが鼻腔を打ち、食欲をそそってくる。南蛮をふり、一箸すすりこむと喉の奥で、蕎麦の味なのか香りなのかあのなつかしいひなびた感覚が感じられる。当り!である。かけそばのつゆも少し辛目になっていて蕎麦を引き立てている。それだけに蕎麦湯はもっと濃い方がおいしく楽しめる気がした。もう一つ、私の好みから言えば、手切りの細い麺だけに茹でる時間が若干短いほうがいいように思った。とくにかけそばでは、細麺だし手切りで出てきてしまう極細の麺には溶けそうな感じのものもあった。
 店内が雑然としていたり、築山に白樺などのせっかくの庭はホースがのたうつように放置されていたり、店主の折角のコンセプトが中途半端でかえってマイナスになっているのは、おいしい蕎麦だけにもったいない感じがした。