狩場山(2)

takasare2005-08-25

 南狩場の山頂の裾を巻くようにして登っていく。岩が作る胸まである段差。まるで土管の中を歩くような低木の樹幹。体のスマートさをチェックするかのような岩が作った15〓くらいの隙間。距離は長くはなかったが、全身で登山しなければならなかった。しかしそこを抜けると南狩場と狩場山頂をつなぐ広く明るい鞍部に出た。
 微風が草をなびかせて渡っていく。草の動きで風が見えるような気さえする。その風を受けたいとでも思っているかのように高山の花が白や黄色をかざしている。狩場山塊頂上直下にあるのどかさの中を、近くの東狩場や大平の緑、遠くの羊蹄や昆布岳の紫のシルエットをながめながら歩くのはまさしく天上の園を行く思いである。これだから山は止められない。
 ただ一つ気がかりなのは熊の掘り返しである。掘り返された草はまだ枯れていない。ついさっきまで土の中に根を張って生きていたように見える。最初は昨日盗掘者が…と思ったが、道に沿って掘り返しが多すぎるし、新しいやわらかそうな糞も見つかると熊がいた痕跡としか考えられなくなった。もしかしたらすぐそばにいて私たちを見ているかもしれない。
 am10:50頂上に着いた。標準登山時間より30分遅い。Koさんと私が足を引っ張ったせいだろう。後続の声の主は函館からの夫婦と女性の三人パーティーだった。「熊の痕跡がたくさんあって怖かったけれど、前を登っているあなたたちがいたので心強かった」と言っていた。賑やかで絶えずおしゃべりしていた。熊は近寄って来れないだろう。
 飯を食い、写真を撮り改めて360度見渡した。北東方向島牧で目がとまる。37年前あの校庭から仰ぎ見て登りたいと思った頂上に立って、37年後の今、かつて立っていた場所を見下ろしている。実際には床丹の浜しか見えないが懐かしい。昨日通った時は校舎も廃校で無くなり町も変わって懐かしさは薄いが、遠望俯瞰するとあの頃を鮮明に思い出す。
 姿気高き狩場山 仰ぎて心磨きつつ わが島牧の学び舎に 集う我等の楽しさよ
 下山してすぐ、さっき通った鞍部の山道に熊の足跡があった(写真)山野草、小さな虫まで見逃さないYaさんが「さっき来たときは無かった」と言う。とすれば…。
 登山口に着いたのはpm2:00。標準下山時間2時間で下りた。