「満る大」谷地頭

 市電谷地頭終点にある。駐車2台分しかない。駐車スペースを必要としなかった時代からの蕎麦屋ということだと思う。テーブル3つ、小上がりに2つの小さな店である。手打ちの看板を掲げるようになってどれくらい経つのだろう。そう古い話ではないと思う。「手打ちのうまい店」という噂には入っていなかった店だったと思う。そういえば、今もあまり聞かない。しかし、私は前から何度か行っている好きな店だ。
 「手打ち蕎麦」(売り切れ御免)と、「機械打ち蕎麦」があり、手打ち希望の人は店の人に「手打ちで…」と声をかける必要がある。そして、手打ちには「挽きぐるみ」と「一本挽き」の2種類あり、これも声をかける。今日は「挽きぐるみ もり」を頼んだ。
 皿に笹竹の今にも折れそうな先端を編んだスノコをおき、その上に盛られて出てくる。色が黒く、口に含むとほのかに蕎麦の香りが鼻をくすぐる。タレも好みの少し辛めでおいしい。こういう蕎麦は、わさびをつけると甘く感じる。わさびをつけたりつけなかったり楽しみながら食べた。ついうっかりメニューを見なかったが、「手打ち」も「機械打ち」も値段は同じ600円だと思う。もしそうだとすれば店主の「たかが…されど…」が伺えてうまさもひとしおとなる。
 店は小さいが、出前の注文がひっきりなしにかかってくる。聞いていると会社ばかりでなく一般家庭の昼食用のものも多い。地域に支えられている蕎麦屋さんだ。
 この次は「一本挽き」を食べに来ようと思う。