夏至

夏至の日を自粛記念のD・I・Y   未曉

 「お父さん忙しくなかったらテーブルのはげたところきれいにしてよ」と妻に言われたのが発端だった。「うわー、面倒くさい」と思ったが、毎日が日曜日の年金生活15年、忙しいことを忘れるほど非生産的な日常が板についてしまっているし、その上「自粛」が叫ばれ忙しい暮らし方が疎んじられる世の中、悲しいかな「忙しい」とは言えない。妻はそれを見透かしている節がある。テーブル天板の塗り直しやることになった。
 最初は色がはげた部分塗装で済まそうと思った。ホームセンターに行って塗料を見繕ったがあるようで無いし、どれかにしようと思えばいろいろありすぎて決められない。ホームセンターで詳しい人と頼んだら、来てくれたおばさんは「ここにあります」というだけだった。おばさんのことは言えない無知に何ひとつ買えずに帰ってきた。
 「これは勉強せねば」と少し気を入れてインターネットを起動させた。「テーブル天板の部分塗装のやり方」検索!ばらばらばらと塗料紹介、やり方紹介、動画、関連グッズのCM…が溢れるようにでてきた。翌日までかかって結局、素人にもそれなりに仕上がり、比較的お金も掛からずに出来るのは部分塗装より「全面塗装」と言うことになった。ホームセンターに無い物は通販で買えばいい。見通しが立つと「面倒くさい」が払拭され、いい気なものである「自粛記念」などと大義名分を付けて取り組むことにした。あとで「あのコロナ禍の時どうしてたっけ」と言う話が出たとき話の種くらいにはなるだろう。
 家を建てた32年前に用意した畳一枚分くらいの大きく重厚なテーブルである。最初は座卓として使っていたが、今は子どもたちの学習机の袖を足代わりに天板だけを乗せて椅子で使っている。傷はあまりないが塗りがところどころはげてしまい、テーブルクロスを掛けてごまかして使っていた。

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