近くに手打ちの蕎麦屋もないし、このさいちがう店に入ってみようかと思い、あれも良いかこれも良いかと迷ったあげく結局蕎麦屋に入って安心する。小上がりしか席がないという。腰が良くないから椅子席の方が良いがしかたない。ここでいつもとの違いを味わうべく思いつきで鍋焼きを頼んだ。待つ間はふつう釜前を見て過ごすのだが小上がりはそれも遠い。所在なくマガジンラックから我が家でとっているものと違う新聞を引き出した。コラム欄に惹かれた。鍋焼きうどんができてきた。蕎麦ならのびるのが心配だが鍋焼きは少しさました方が美味しく食べられる。コラムを読み終わるまでの少しの時間はいつもの蕎麦食い男ではなかった。少し違うことをするといろいろ違ってくる。

  小上がりの降る雪影に打たれ待つ  未曉