雪掻き2003年

 教室での一日の準備をしながら登校してきた子ども達と他愛のない話をしているうちに朝の職員打ち合わせの時間になる。三階のホールの窓から見ると遅刻しそうな子なのに急ぎもしないで歩いてくる。私がさっき付けた一筋の道は今はもう巾広く踏み荒らされてしまっている。50cm巾は自分が付けたからところどころなんとなく判る程度だ。
 早く登校してきた何人かの子どもは私が付けた道を歩いてくれる。しかしそんな子ばかりでは葬列になってしまう。おしゃべりに夢中な子どもはどうしてもおしゃべりが50cm巾には収まらなくて横にはみ出てしまうだろうし、押っつけたり逃げたり追いかけたり…、元気な子どもには50cmでは間に合わない。いろんな子がその道巾を3mくらいにまで広げている。グランドの雪原の中に伸びている足跡は登校を忘れ、その足跡で遊び始めてしまっている。学校教育はそういう子どもたちで成り立っている。私の今朝の労力は子ども達の元気の足跡に影も形もない。
 それでいいのだ。自己満足の「にやり」とともに「また明日雪が積もっていたら一筋50cm巾の径を付けておくさ」と独りごちながら職員室へと向かうのだ。