雪掻き・2003年

 毎朝私が開錠する。誰もいない校舎内の一階から三階を三周ランニングする。当然校舎内を走ることは禁止されている。古今東西どこの学校でも「廊下は走らない」だ。私も走った児は叱る。けれどそれは他の人に危険だし大きな迷惑を掛けるからだ。誰もいない校舎を走ってはいけない理由はない。第一誰も見ていない。もう暖房も入っていて暖かいし、階段も良い運動になる。三階の空き教室でスクワットとストレッチをして今日が始まる。
 しかし雪が積もった今朝はそれをカットする。くるぶしより上まである雪だけど軽い。それだけに小さな子どもの靴に入りやすい。この頃の若い母親は長靴を嫌う。
 赤い雪掻きで職員玄関前と児童玄関前の庇の下をきれいにする。そこから校地へ入ってくる子ども達の通路三方向へ雪掻き一つ分50cm巾の雪を押して道を伸ばす。道とは言えないがすこしへこんだ筋ができる。
 私が勤務するK小学校は四方を住宅に囲まれた中にあるため校地が大きな道路に面していない。子ども達は住宅地の中の3つの取り付け道路を入ってくる。赴任の時校舎は見えているのに入り口がわからず一回りしてしまったほどだ。校門のある西側の道路は車が入れるが通り抜けはできないから一般車は通らない。従って道路から校門までの30mに市の除雪は入らない。ここは児童玄関から校門まで50mの雪を掻く。子ども達が最も多く登校する北側の通路はグランドの脇を通るから取り付け部分も含めると100m余ある。ここは取り付け道路も含めそこに繋がる表道路の歩道の手押し信号までついやってしまう。もう一本は南側、学校の裏側にある集合住宅の脇を抜けて来る。ここは北側への通路との分岐からその境まで30mくらいか。
 その三本に50cm巾の道を雪掻きで押し開く。朝それ以上のことはできない。肝心の授業を前に体力を使い果たすわけにも行かないし、プリントなどの準備もある。ほかの先生たちが来る前に印刷機を使いたい。
 きれいにできあがったばかりの道をバス停への近道として早速どこかの女性が通っていく。少し自己満足を味わいながら校舎へ入る。(つづく)