落し文

 昨日の伊達紋別岳、山道にオトシブミがいくつも落ちていた。下山の時に多く見られたので、しかるべき人に届けてほしいと訴えかけられているような気になった。
きちんと丸められ山道の木下闇にさりげなく置かれるように落ちているそれに「落し文」と名付ける日本人の感性に驚くばかりだ。汗だくで焦点が合わなくなっている目に涼しささえ伴って映る。
 広辞苑によれば、山で見るそれは生物学的な体系の中の昆虫「オトシブミ科の甲虫の総称…」だがそこから広がる思いはロマンチストならずとも「公然と言えないことを記して、わざと通路などに落としておく文書。落書。」へと広がる。公然と言えないこと…。それは人を恋しく思う心などと勝手に妄想を膨らませて。
   また一通恋路は山路おとしぶみ   未曉