わたすげ

 二日目は乳頭山を目指した。朝までの雨で滑りやすい道を悪戦苦闘しながら登った。加えて背丈以上の笹竹や木々が登路端を覆い、時にはかき分けるように登らなければならなかったし、何より視界が目の前だけという単調な登りに疲れを強いられた。
 それがいっぺんに展けた。田代平である。打って変わって木道とニッコウキスゲトキソウ、サワラン、ワタスゲなどの花々が足取りだけでなく心も軽くしてくれる。乳頭山のなだらかな起伏が空と湿原の間に伏せている。
     ワタスゲの風乳頭へ雲もまた   未曉