リラ冷え

 一軒おいた隣の家の庭に藤の花が満開である。隣の家にも小さな庭地があるが、タンポポ原なのでそちらに目が行ってしまう。実はこの藤の花の家は6月まで無人である。6月の末本州の梅雨が本格的になる頃、東京から避暑にきて十月末になると東京に帰って行く家である。夫婦二人羨ましい生活だが、この見事な藤の花は自分の家の花なのにまだ見ていないはずだ。いつもこの花がみすぼらしい姿になってから来函するからだ。管理を頼まれている近所の人が庭の草刈りを始めた。今年もそろそろ来る頃になったということだ。鳥の渡りのように
 同じ薄紫だが、我が家はライラックだ。
    ほぐれゆくリラ冷えリラの風止めば  未曉