辛夷

 人に背を向けるわけではないが、人混みの中の花見はつい足が鈍る。花の盛りがゴールデンウイークと重なる近年はその傾向が強い。今日はウォーキングもかねて我が家周辺の花見へと歩くことにした。ところがいざ歩いてみると今年はなぜか桜より辛夷の花が目立つ。このあたりの桜は遅いのかもしれない。
 桜はもちろん美しいが辛夷の素朴な白やその咲きようも捨てがたい。モクレンと科を同じくするが、あのおしつけがましい印象の強さより好ましい。バックの青空をさらに青く、中に小鳥が来ればその小鳥を引き立てる。
風呂帰りに見た辛夷は、薄い夕日に初めてスポットが当たったように輝いた。
      誰がために昏れ残りをり花辛夷   未曉