鳥雲に入る

 私の記憶では私の人生最初の友達はロシア人のトーリャという男の子だった。終戦前後の混乱の樺太でのことだ。記憶と言っても上下にスライドさせる窓に私とトーリャが頬杖をついて居るのを外から撮った写真とその名前の記憶だ。写真を撮ったくらいだから友達として少しは遊んだだろう。その時の年齢なら言葉の違いは全く問題にならないだろうから。
 その写真も引き揚げの時に没収されたのか残っていない。誰が写した写真かわからないがトーリャが持っていて、時々見ては「これは誰なんだ」などと懐かしがっているかもしれない。
   鳥雲にトーリャは今も樺太に   未曉