みちのく余韻(四)  
 最上川の舟下り、途中の対岸に設けられた小屋掛けの船着場に船が着けられた。トイレが小高いところに用意されていたが、小屋には魂胆が透けて見えるかのようにいろいろなものが売られていた。着く寸前に「焼き鮎」の看板が見え、降りるつもりもなかったが「鮎が食べられる」と思うと衝動的にその店先に立っていた。
 待っていたかのように焼きたての鮎が波のように串刺しされてわたされた。背中にかぶりつくと特有の香りが身がほぐれながら鼻を打つ。腹を口に入れると香りにやさしい苦味が加わってとろっとした食感とともに口と鼻を覆う。旅の思いもあるだろうし、食べるのが久しぶりということもあるだろう。焼きたてのせいもあろうが、すごい儲けものをしたような満足感でふたたび最上川の流れに乗った。
     鮎の腹食ふて最上の青世界   未曉