新緑

 遊歩道が作業道と交差するところから外輪山展望所まで1KM。振り返るとまだ春紅葉が残る新緑の向こうにビニルトンネルが並ぶ耕地そして有珠市街から噴火湾が望める。その彼方は今日は霞んでいるが足下眼下は初夏の豊かさに満ち満ちている。再び新緑の林に身を染めこむように急登に喘ぐ。やがて路は緩やかになりその分大きくジグを三回ほど切ると有珠岳外輪山の稜線に出る。眼前に荒涼たる有珠の火口原が口を開けている。色こそ白いが噴煙は毒気のように絶え間なく吹上げている。救いを求めるように豊穣の新緑の背後へ眼をそらす。
   新緑や噴煙火口無季無情   未曉
 下山、登りの時はたくさんありすぎて珍しくもなかったクルマバソウの小さな白い花が愛おしく見えた。