私はサッカーサポーター(2)

 その頃兄から二つのことを聞いていた。ひとつは「日本のサッカーはプロチームができなければならない」ということと「そのために子どもたちにサッカーを教え、底辺をひろげなければならない」ということだった。地元に、当時卒業生のほとんどが教員になる教育大学函館分校があり、兄をはじめそんな夢を抱いた高校蹴球児の多くがその大学を卒業し先生として北海道内に散らばり、中学校でサッカー部を育て、小学生をサッカー少年団に誘った。
 経験も無いのに、私も秘かに「子どもたちにサッカーを教えようかな」等と考えながら教師として後志に赴いたが、赴任した学校は児童数も少なく、新米教師としての日々に追われる私には遊ぶ程度のサッカーを子どもに伝えることしかできなかった。渡島に戻って少し大きな学校に勤務することになり、余裕もできたのでサッカー少年団を作った。、子どもたちはまじめに練習してくれた。郡内5、6校での試合だったがサッカーの技術もなく指導実績もなく口ばかりの指導で強くすることはできなかった。2,3年後に現役選手が新卒教員として赴任してきたのを潮に指導を譲り、試合に行くときの運転手に徹した。それ以後は、テレビでの「サッカーサポーター」を自認している。卒業した中学校も高校も無くなり、立ち上げたかの小学校の少年団も今は無い。だからサッカーサポーターとしてのモチベーション維持のため、コンサドーレを応援している。
 日本代表のワールドカップは終わった。ねぎらうも良し、批判するもいいだろう。
ある日、日本にプロリーグができ、きら星のような外国選手が日本の芝生の競技場で華麗なプレイを見せてくれた。今は日本人プレイヤーが世界の強豪クラブチームのユニフォームを着けて活躍している。広がった底辺は確かに頂点を高くした。そして今回、日本代表は私たちをワールドカップへ連れて行ってくれた。
 一次リーグ敗退とは言えこの結果は、「プロができなければ」「底辺を広げなければ」という夢以上の結果である。日本中に、昔自分が夢見た夢の形としてこの結果を見ている人がたくさんいると思う。 また夢を見ればいいのである。(終)