アサギマダラ(1)

 今朝の北海道新聞に「アサギマダラ…七飯・北九州1235キロの旅」という記事が載っていた。要約すると今夏8月七飯町横津岳で高校生によってマーキングされたアサギマダラという蝶が北九州で撮影されたというのである。およそ90日で1235キロ南下したことになる。単純に計算しても、あの羽根の力で一日13キロ余飛翔したことになる。
 まず津軽海峡を飛び越えなければならない。蝶としては大型というがそれにしたってあの身体分しかないエネルギーで飛び、あの羽根でしか風を捉えることは出来ないのにである。それも湿気の多い海の風である。私には幻を見るように想像するしかない。海峡を渡る蝶を見てみたい。今年は豪雨の日が多かった。海峡を越えたにしても飛べない日もあったに違いない。大きな葉裏でじーっと青空を夢見ている蝶を思う。飛べないでいるアサギマダラを見てみたい。
 海峡を越えられなかったアサギマダラもいただろうし、雨に打たれて地に朽ちたアサギマダラも想像に難くない。鳥におそわれたもの、人間のはき出す汚染にまみれた羽根で飛べなくなった蝶…。それを思えば北九州へたどり着いたアサギマダラは奇跡の存在でしかない。
 私は先日松前勝軍山でアサギマダラを30センチメートルの近くで見ていた。その時はカメラを10センチメートルまで近づけて撮影することもできた。それ以後パソコンのトップ画面はその時の、薊の花で吸蜜するアサギマダラになった。パソコンが立ち上がるたびに薊とアサギマダラのアップ写真が画面に広がる。私が写した写真だからピントは薊の方に行ってしまっているのだが、我が奥さんをして「きれいな蝶々だね」と言わしめている。今朝はその美しさが、この新聞記事で一層輝いている。