立春

 両眼眼底検査のための散瞳薬がまだ効いていて眩しい。運転はしないからいいだろうと外に出た。弱い日差しだが雪に反射し、眼中すべてが白光して何も見えない。動けず病院の玄関前に立ちつくす。自動ドアが閉まらない。眼鏡にサングラス効果が出てきて陰影が道を現し、街の景色を現した。立春。今年は眩しさだけでは立春を言祝ぐことも出来ない。雪も寒さもまだ深い。
 バスが家に着く頃ようやく普段の見え方に戻った。桔梗野は寒そうな日光を反射して輝いていた。しかしわたってくる風が目を刺す。
    立春や野面眩しき北西風   未曉