近所の西嶋さんのおばあちゃんが亡くなった。家族葬の祭壇の遺影は微笑んでいる。
 道で10メートルほど離れたところから挨拶されたことを思い出した。挨拶を返し「毎朝散歩されて…お元気そうですね」と言ったら、怪訝そうな顔をして「ごくろうさま」という言葉が返ってきた。悪いけれど「呆けがあるのかな」などと思っていた。葬儀の後娘さんが「片方の耳が聞こえなかった他は、倒れるまで頭も言葉もしっかりしている母でした」と言っていた。近寄って話をしようとしなかった失礼と誤解を残してしまった。柔らかな笑顔を残された。
     秋の風弔句読経に紛れゆく   未曉