その3=ともえ大橋

 万代町まで乗れば運賃表の金額がかわりそうだったのでバスをガス会社前で降りた。。それにしても300円。JRなら函館駅まで乗っても210円なのに…。そんなことを考えながら乗っていたので久しぶりのバスは落ち着かなかった。函館市ウォーキングマップ完歩をめざす巴協散策に自ら定めたポリシー「コースへのアプローチに車は(なるべく)使わない」と決めたが、バス運賃結構かかるかもしれない。
 昔、このあたりで唯一私が来た神田書店も今はない。それも、高校や大学時代に指定されたテキストを買いに来るくらいだったから記憶も乏しい。有名な本屋さんだったからその意味で無くなったことが淋しいのだろう。函館駅方向に行くと骨董屋というか古道具屋があり、店横に大きなガラスの浮き球が積み上げられている。懐かしい。このガラス玉に小さなガラスの脚を三つつけ、上に15,6センチメートルの穴を開けた金魚鉢が家にあった。小さな金魚鉢で金魚を飼っていた母に、父が作ってもらったものだったと思う。私は子ども心に大きいなー、広くなったなーと感じたものだった。水を入れてしまうととても重く、水を換えたり、洗ったりするのに母が大変そうだった事を覚えている。その向に「野武士」がある。年に一度来るか来ないかの店になったが懐かしい店であり、一月に来たときママさんは元気でいてくれた。
 電車が走っていた国道を海側に折れ、踏切を渡るとすぐ港の雰囲気になる。大きな建物、広い敷地、空が大きく見えてきて、海の香りの中に入っていく。ともえ大橋の起点である。サイロと書かれているから農業関係の貯蔵施設だろう、大きな施設のある万台埠頭を背中にともえ大橋の歩道をゆっくり登る。海と空が広くなる。港の上にせり出すような感覚が距離感や方向感を狂わせる。眼下はもう中央埠頭、ドック、西埠頭や緑の島は手を伸ばせば届きそうな近くにある。これが巴地形なのだろう。函館山を見ると狂った感覚が少し戻る。歩けば歩いた以上に元町付近の景色が近くなる。函館らしさの中にもどっていく感じで歩ける散歩コースである。生活感から解放されたい時の散歩には良いかもしれない
 車道はひっきりなしに車が通るが歩道は誰も通らない。すれ違う人もいなければ追い越す人もいない。振り返っても前を見ても誰もいない。終点まで30分で歩いてしまった。コースとしては今来た歩道を往復することになっているが、私は復路はともえ大橋の下を通って帰ることにした。途中建前上立ち入り禁止の区間もあったから散歩コースとしては紹介できないだろうが、実際には歩けたし、何人かの人が歩いていた。