明日は瓢箪句会である。兼題「春めく」がなかなかできない。義母送迎の車の中で幾つか作った句を舌頭に転がしてみてもどうもぴんと来ない。さりとて新しい発想もない。
 義母を椴法華の家までまで送り、眠気覚ましのコーヒーを飲んでいると棚の上の中空土偶のレプリカが目に入った。中空土偶だから目も口も中は虚なのだが目は何かを見ているし、口は呼吸しているように見える。
小さな口は素朴に円く開けられているが、そこから冬の終わりを感じて「ほっ」と安堵の吐息をもらしているように見えた。数日前から気になっていた吉永小百合のCMの「ほっ」が突然中空土偶の口にかさなったのかもしれない。
 吐息では「春めく」ではない。「春愁」になってしまう。ここは窮余の一策、欠伸にした。
    春めくや土偶の口の小欠伸   未曉