陣川・八十八ヶ所巡り石仏群

 一気に秋闌の蝦夷松山へ行った。Yamaさんは八十八ヶ所巡りの石仏を写したいという。私も吟行と鳥雲の表紙取材が出来る。
 陣川温泉から悪路を300Mほど車で行くと、我々が通称ロータリーとよぶ十字路に出る。そこに車を置く。その辺りが八十八ヶ所巡りの出発点であり終点になっているようだ。道の左側の石仏を辿り500M程先の谷にある奥の院まで行き、帰路に往路の向かい側の石仏を拝んで降りてくるようになっている。
 Yamaさんは全ての石仏を写している。私は木漏れ日の感じがいいものだけというか気に入ったものだけを写しながらぶらぶら登った。石仏の台座に寺名と番号が彫られている。四国八十八ヶ所を移したものだと思うが並び方も飛んでいたり抜けていたりしていて、どう数えてみても八十八体は無い。Yamaさんは「きっと下の本寺のほうにあるのだろう」と言っていた。
 蝦夷松山に登るたびに見てきたが、こんなに整備されているのは初めてである。草や枯れ木に埋もれているような石仏は一つもなく、まわりはきれいに刈られ、誰でもお詣りできるようになっていた。檀家さんたちの信仰心がうかがえる。昨年のイメージから「野紺菊と石仏のコラボレーション」を撮りたいと思っていたが、それらの秋草もきれいに刈り払われてしまっていた。きれいに周囲を整備された仏様達は私が勝手に持っている野仏のイメージよりも逆に寂しい感じがしてしまった。
 奥の院(勝手にそう思っている)も笹の一本も無く、きれいで静かで薄暗い中にあった。谷川に衆生橋という小さな鉄製の橋が架かりそれを渡れば高野山真言宗という札の懸かった祠に不動明王が鋭い眼光を放っていた。栃の実が不動明王を慕い集まるようにまわりの斜面一面に降り敷かれていた。