運転免許更新

 誕生日に半月ほど速いが今日運転免許の更新に行ってきた。視力低下が気になっていたので一月ほど前に受診した眼科医が「調子が良ければパスするし、ダメかもしれない境界です」と言われ「ダメなときは眼鏡を変えたり、白内障の手術をする必要があるかもしれないから早めに更新手続きをした方が良いかもしれません」とも言われていたからである。
 視力検査の列に並び、前の人たちのランドルシ管の読みを覚えようとしたり、二ヶ所の検査者のどちらが厳しく無さそうな人か探ったり、まるで保健室での視力検査前の小学生のような気分になっていた。
 眼鏡を懸けたまま二つの円く明るい穴に目を寄せた。いきなり両目のまま切れ目の分かるランドルシ管が提示され答えた。心の中で「良し!」。二個目少し小さくなった。「右」消えない一瞬で見直す。「あっ下です」
この後、さらに小さい輪が三つ四つ提示された。見えたような気がして答えたが自信は持てなかった。そして突然終わり、「いいです」と検査官の声がした。私には「(まああぶないけれど…)いいです」のように聞こえたが、他の人と同じように「これを6番の窓口に出して下さい」と言われたときにやっと安心できた。そしてすぐ、三年後の免許更新時、自分の視力はどうなっているだろうと考えた。
 今回の更新に揺れ動いた思いは、自分が今まで苦労して手に入れたものを次から次へと棄てさせられるように失っていく前兆のように思えた。年をとると言うことはそういうことなのかもしれない。