[[たかされコラム]車で奥のほそ道・医王寺

 福島市街をはさんで北西にある医王寺は、義経追慕の情から訪れている。平家打倒に奥州から義経が立ったとき、この地の佐藤庄司は二人の息子継信、忠信を義経に従わせた。継信は屋島の合戦で、忠信は頼朝に追われ奥州へ落ちる時共に義経の身代わりになるようにして討ち死にしている。平泉に落ち行く前義経主従はこの医王寺に参籠し兄弟の遺髪を埋めて追慕の法要を営んだという。兄弟の母乙和御前に対する奥方達の孝心も伝えられている。寺内には義経の刀、弁景の笈が奉られていたという。
   笈も太刀も五月に飾れ紙幟   芭蕉

 うっそうとした竹林の脇の駐車場に車を入れ、拝観料をはらい薬師堂へ向かった。右側は白塗りの土塀。所々に椿があり、花が落ちている。左側は杉が並木となって寺境となっている。その向こうは農家の畑である。おじいちゃんと孫が剪ったばかりの木の根をはさんで引き抜くための根回しをしているようだ。そういえば春休みだ。小学校高学年らしい男の子が一生懸命鋸を挽いている。おばあちゃんが少し離れて見ている。この家もお寺の何かの時には骨を折って尽くされるんだろうなぁと思った。武士と寺そして農民。

   春耕や医王寺今日も道一つ    未曉