私的蕎麦の道(3)芦野・遊行庵

 偶然車を停めたところが遊行柳観光のためのドライブインで、そこには芦野市公営の産直販売コーナーに併わせて「遊行庵」という手打ち蕎麦屋があった。遊行柳を見た後蕎麦を食べることにした。昨日の日光市から、今日午前中の那須高原でも林立する「手打ち蕎麦」という幟に食傷気味だったが、やはり食べるなら手打ち蕎麦が良い。ましてや、蕎麦の打ち場までガラス張りで見えるようになっている。その中で白い上着に白い前掛け、白い帽子の職人さんが打ち場の後かたづけをしている。調理場の中には女の人が3,4人。そのうちの一人が注文を聞きに来た。もり蕎麦を頼む。先客は初老の夫婦。少し不安になる。このパターンは余り良くない。蕎麦を打つ人が釜前にいないと言うことは、大事なそばの仕上げを別な人がやると言うことだ。道の駅などに良くあることだ。
 ここの蕎麦から一口で言えば、麺は山形田舎蕎麦風であり、関西風かけ汁、辛汁は甘めの蕎麦が始まった。この後盛岡まで麺はつるつるで太めだが山形のごんぶと田舎蕎麦のようなもさもさする感じはない。しかし、山形の蕎麦への意識が強いようで、看板にわざわざ「山形田舎蕎麦」とか「山形蕎麦」と謳っている店も何軒かみた。中間、会津の蕎麦も食べたことはあるが今度その視点から食べてみる必要も感じた。
 私はさらっとした少し細めの蕎麦を辛めの辛汁を少し付けて啜るのが好きだが、出されたもり蕎麦は水に濡れてつるつるてらてらしていた。そばの香りは大事にされていたが、歯応え、口触りは私の好みではなかった。辛汁には砂糖の甘みが残っているような甘さを感じてしまう。山葵がきかない。もり蕎麦の終わりはやはり、水に泳ぐ蕎麦の切れ端を食べなければならなかった。地元の山菜をかき揚げにした十割蕎麦があるというので追加した。やはり蕎麦の食感は乏しかったが、うどん風蕎麦だと思えば十分美味しい。醤油好きの私としては関西風のだし汁は美味しさに文句はないが、色が淋しい。
 打ち場の職人さんには、ぜひ客に出す最後まで自分の蕎麦に責任を持つために釜前にいて欲しい。