札幌往復は得割切符というのを利用する。朝と夕方の便を指定されているが特急指定席で少し安い。今回は出発時刻になっても隣の席は埋まらなかった。隣は空いているのかな?と半ば期待する。しかしこの特急は五稜郭で停まる。淡い期待もつかの間案の定若い男が乗ってきた。どうやら出張らしい。席に着くやいなや鞄から書類を出して熱心に目を通し始めた。私は買ったお茶一本を呑みながら文庫本を読んでいる。彼は忙しい。突然書類を置くと携帯電話をポケットから出しながらデッキに向かう。帰ってくるとまた書類をチェックする。それは、札幌に着くまで続いた。実はこの列車北広島駅で電気系統のトラブルとかで1時間40分停滞を余儀なくされた。1時間40分は動き出して分かったことで停まっているときは再出発がいつになるのか分からない状態だった。多くの乗客がこの特急を棄てるように降りて行った。私は時間に余裕もあったし冷やかし半分でJRの対応を楽しんでいた。隣の彼も当然先を急ぐのかと思ったら、降りなかった。しかし書類と携帯電話の行動パターンは続いていた。仕事から遠ざかってしまった私には気の毒に思えるほど忙しそうだった。
 記者の旅の相席はお年寄りや女性はそれなりに気を遣ったり緊張する。空席が最も良いが、忙しいサラリーマンは少し落ち着かない変わりに気が楽だと言うことがわかった。
  書類見る男相席春の旅   未曉