つぼ足七飯岳

 もしかしたら…程度に期待していたが登山口近くの福寿草はまだ雪の下だった。雪面が硬くつぼ足で歩ける。その分ペースを忘れて速くなったのかすぐ息が上がってしまった。いつもなら一汗掻くとなんとかなるが、着衣調整してもいっこうにつらさは解消しない。すぐ休みたくなってしまう。石切場を感慨深そうに見て実は休んでいた。
 足元から石切場幾何学模様が広がっている。自分が裁っている尾根、向こうの尾根、周りの山の様子から類推できる山塊がすっぽり消えている。砂利になってしまった。小さな機会やトラックが大自然に挑んでいる。その無駄のような小さな営みが山を一つ消してしまうのである。
 石切場を離れ、牧場に繋がる林間の尾根路も急登である。休むだけではない。ストックを持つ両拳に自分の胸を預けてしまうほど堪えるのである。この時期の七飯岳登山では最も歩きやすい雪の状況なのに、最も疲労がきつい登りをした。

 昨年同様大斜面の直登を避け、裾をトラバースして東端の岩場から登った。一気に登ればいいからこの岩場登りが好きだ。といっても壁状の雪面にYamaさんがステップを切ってくれるからそんなことも言える。今回はYamaさんはピッケルを持ってきた。先頭でピッケルをふってステップを刻んでくれた。その階段を登って岩稜の上に出た。当たり前だがこの登りが最も楽だった。
 登ったところの大岩が風を除けてくれるような気がしてそこで昼飯にしたが、かえって冷たい風の抜け道になるらしく握り飯を持つ素手が冷たかった。
 頂上を経由して下山はつぼ足歩きが楽しい。あれほどあえぎあえぎ登った所をどんどん下った。少し調子に乗りすぎて膝や腰に影響が出そうなので後半落ち着いて歩くことにした。それでも登り3時間弱もかかってしまった所を1時間半弱で下りてきた。