床屋に行った。以前の床屋が店を閉めたので近所で探した。ヘアスタイルとか技術とかは私の頭に必要はない。落ち着ける店を何軒か廻って探し、今のところに決めた。こちらに合わせて喋らないでくれるからである。私は無口を拒まない床屋さんが良いのである。
 外は今朝の雪がもう溶けて春が近い。そしてそんな春の様子を塞ぐように鏡の中は床屋さんと私が大きく映っている。聞こえるのははさみの音。眠くなる。眠くなるのも春が近い証拠だ。今日は雛祭りである。
  春床屋鏡に映る無口かな  未曉