オリンピックのカーリング予選リーグ、日本対アメリカの試合を見た。スリリングで興奮した。計8人の選手が1エンド2投ずつ10エンド。この試合は結局最後の最後その160投目の結果を計測することで勝敗が決まることになったのである。勝負の舞台となるサークルの中心点から両チームのストーンの距離を計測した。計測器のアームの先端には小さな球体が付いていた。ストーンも球体、接点は一点しかない。アメリカの距離を保ったアームが円を描いて日本のストーンの側面に近づくそして静かに止まる。それ以上アームを回転させようとすると日本のストーンが押されてしまう。きっと押されるのは1cmに満たないだろう。計測者の左手が掌を上に厳かにゆっくり勝者、日本のストーンを差し示す。
 スピードスケート女子500Mでは二人の走者がゴールラインを同時に滑り抜けていた。ようにしか見えなかった。スローでそのゴールを再現してくれた。ゴール直前追い抜いた手前の選手のスケートがゴールラインを越えたとき向こう側の選手のスケートはスケート一つ分遅れていただけだ。時間は0.003秒の差だった。2回の合計タイムで競うとか誰と滑るとか、勝負以外の要素もあるようだが、結果的には私達の日常では時間と認識出来ないほどの時間差で勝者と敗者が決められるのだ。
 ここに来た選手達はこの競技を始めたときからこの距離差、この時間差の戦いをしてきている。この距離差、この時間差で国内を勝ち抜いてきている。この距離差、時間差で金だ銀だ…メダルを逃す…○○位に沈む…などと騒がれる。しかし、それぞれの選手の陰にはこの距離差、この時間差で負けてオリンピックに行けなかった沢山の人がいる。その人達にとってこの距離差、時間差がどれほどの励みになるかと思う。
 勝つ場面を見たい。しかし、負けたときの距離差、時間差も見届けたい。