蒜沢の冬芽を訪ねる催しの事前踏査に参加させて貰った。
 樹木も冬芽という角度から観察しようとすると全然違ってくる。まず目の位置が違う。木としてみるならば、遠くても良いし遠い方が良い場合が多い。しかし、芽を観察するとなると、木に近寄ってもらうわけにはいかないから、自分の目を10cmまで近づけなければならない。普段なら出来ないが、冬芽の出るこの時期笹の上まで積もった雪が固く締まっていればどの木であろうと傍までも行ける。その上、いつもなら見上げなければ見えない枝先も積雪のおかげで目の高さで観察できる。
 第二にその多様性である。私のように広葉樹と針葉樹の区別でせい一杯の者には皆同じにしか見えない樹木だが、その冬芽の多様さも私には「へぇー」の連続である。固い衣で覆われたもの、暖かそうな毛に包まれたもの、粘りけのある分泌物で寒さを防ぐもの、形状で、小さいことで…。芽吹いた後の葉や枝の延ばし方にも配慮されているようだ。
 環境との関係、鳥や獣たちとの関係、人間生活との関係など冬芽にかかわる観点の広がりを感じてしまう4時間だった。エゾカワヤナギ、ホオ、トチ、コバノヤマハンノキ、キハダ、オオカメノキ、クロモジなどの冬芽をカメラに納めてきた。
 寒さとはっきりしない天気のためしばらく振りの歩きだった。膝に違和感があったりしたが、冬芽を観察しながら蒜沢を庄司山登山口まで登り、桔梗尾根を使って周回するだけだったので、足慣らしになった。
 私の観察眼では人より先に何かを見つけることなどあり得ないが、みんなが見ていた木の少し離れたところにウスタビ蛾の空繭を見つけた。以前駒ヶ岳山麓を歩いているときに見つけたものだったのですぐ分かってみんなに教えた。鮮やかな薄緑の美しさに挙がった感嘆の声が密かに嬉しかった。
  山繭や北西風も薄緑   未曉