年越しの「鯨汁」のための買い出しに中島廉売へ行った。今、この廉売が他と比べて安いとか新鮮だとかは私にはわからないが、この市場の雰囲気はふだん買っているスーパーには無いし、鯨汁はこの雰囲気を通過してこそあの味になりそうな気がする。そういえば昔の年用意は歳の市で揃えていた。今はスーパーの日常の買い物のついでで済んでしまう。正月のありがたみや厳粛さが薄れているのもそんなところにあるのかもしれない。
 鯨の脂身が新聞紙で巻かれる。「そりゃミンク鯨だべさ」という店のお母さんに他のお客さんも交えて鯨汁話しになる。突きこんにゃくがビニール袋に直接突き出される。売る方も「これは鯨汁用だな?」と感じながら売っているにちがいない。
  鯨汁談義に市場客交じり   未曉
  冬の雨廉売の灯の外に降り  未曉