月一回の病院通い。医師の診察は五分とかからないが、薬を処方してもらうためには隔月に受診しなければならない。昨日は待たされた。聞くとインフルエンザワクチンの接種を希望する人が多いからだそうだ。人間観察で飽きないが、病院の待合室はそれがそのまま自分に返ってくるところが切ない。
  我が喉に届く嗄れ咳椅子三つ   未曉
 2時間待っていつもの医師の前に座る。顔を併せるなり「済みません、長く待たせて」と謝られる。医師の責任でもないしこちらも覚悟して小説など持って行っているから「どういたしまして」などと言える。じつは、待たされるいらいらの7割は、自分の名前を呼ばれた瞬間解消しているのだ。挨拶して医師の前に座る。案の定「どうですか」「変わりないです」の二言で終わる。パソコン画面のカルテと私の顔を交互に見ながら確認していく。「じゃあいつも通りの薬でいいですね」と自分に念を押すように言う。五分もかからない。私はお礼を言って立ち上がる。医師は2時間も待たせたのに五分で終わっては悪いと思うのか画面から目を離さず「お大事に…」と言い「すぐ続けて「今月は血液検査の月です。採血していきましょう。」となぜか晴れ晴れとした顔で付け加えた。「しまった。夕べいつもより多く酒を呑んでしまった。」のだ。
  霜月や採血管を我流れ      未曉
 採血をする看護師も「二時間も待たされたんですね。ごめんなさいねぇ」と言葉をかけてくれたが、私は採血管を流れる自分の血をいつもより黒っぽく感じて見ていた。