天塩岳・沼の平(5)

 4時前に目覚め、永山岳、安足間岳、比布岳、当麻岳の縦走をするA班を見送ろうと思っていたが、Yaさんが様子を見に行ったら出発してしまったとのことだった。一時間遅れの沼の平巡りB班も出発準備である。天気は最高である。冷涼な朝の空気も気持ちが良い。
 昨日が準備運動になったのか今日は楽に歩ける。分岐から33曲コースに入る辺りでH7カメラを忘れたことに気づいた。Niさんの準備を待っている時に点検すれば良かったのに後の祭りである。大きな景色をP8で撮さなければならないのは残念だがしかたがない。体調はいいが道が悪い。大きな石が障害物のように登山道に累々と置かれ、石と石の間の土は水が流れ溜まっている。石も濡れていて滑りそうだ。登り田kらいいが、下りは相当つらい道になりそうだ。木の丈が低くなり頭が笹野上に出た。愛別岳、永山岳が未だ少し早い紅葉の斜面を大きく流して私達のところまで続いている。かすかにヤッホーの声が聞こえる。私には見えないが、A班が永山岳への途中から私達を見ているらしい。私も風下を押して声を出した。
  ヤッホーの応答の間や浅紅葉   未曉
 八島分岐から高層湿地帯に入る。木道が設置されている所が多くなり、沼の岸は王様の道のように歩きやすく切れることなく続く。青い空、紅葉の山肌、枯れ色の湿原、沼に小波をたてた風に吹かれて王様になってしまった。さっきまでの悪路はすぐ忘れてしまった。カメラに不満を感じながらも景色を撮し、楽しむ仲間を撮しまくった。
 六の沼の展望所からYaさんが少し上から写真を撮ってくるといって当麻乗越への道を登っていった。私達も後を追う。Kuさんは帰りの膝を心配して待っているという。写真を撮る人、当麻乗越の近くまで行く、人三々五々の歩きで絶景を楽しんだ。登山道の傍に大きなな岩が塔状に立っている。第二展望台というらしい。少し途が隠れてしまっているがみんながそこに集まってきた。よじ登って360度見渡した。
 大きな秋である。風が吹き渡る広い秋である。湿原は、空を映した沼が休止符のように秋の色を奏でている。見てきた沼見られなかった沼が一望出来る。背後には旭岳が大きく迫る。噴煙が冷気のせいか白さを輝かせている。山登りに来たのだからA班のルートを歩きたい気持ちもあったが、この景色はそれに余りある感動だった。Sa夫人が「当麻乗越を来た人に聞いたら、旭岳のロープウエイはすごい混雑だと言っていた」と教えてくれた。とすれば、尾根ひとつ越えたこちら側のこの静けさもこの感動に付け加えなければならない。
 六の沼に戻って昼飯にした。帰途、八嶋分岐でメモリースティックの容量が切れた。H7カメラを忘れ、P8だけで映したからだ。撮したい景色がありすぎたとも言える。不必要なものを消そうかとも思ったが、大事なものも消してしまいそうなので止めた。
 沢コースを降りた。崖があったり、ロープ場があったりそれなりに慎重を要するところはあったが、集中の連続を強いられるような所はなく、滝を賞で、渓谷美を楽しみながら歩けた。33曲との分岐まで来た。もう一息…。男の子が二人どかどか歩きで私達を追い抜いていった。ニュージーランド以来の若者のどかどか歩きが爽やかである。こちらはよれよれ歩きで旅館にたどり着いた。
 帰りに33曲がりコースを使ったA班がもっとよれよれ状態で5時近く無事下山した。33曲がりへの恨み節が聞こえる。「わかるわかる」と同情できた。
 みんな疲れているのに夕食に出た山女の塩焼きが冷めて湿っていたのが恨めしかった。山の会には珍しく夜の反省会も早い切り上げだった。二山連続のせいだろうか、明日の帰りのロングドライブに備えてだろうか。
  焼山女冷めて夕餉の山の宿   未曉