客あしらい(1)

 「客あしらい」という。けれど「あしらう」という言葉には「ぞんざいに扱う」という感じがあって、辞書を見てみた。「扱う」「応対する」「もてなす」とあり、転意として「いい加減に扱う」となったようだ。「客あしらい」と言う言葉は「お客のもてなし方」という本意を大切にした客商売のテクニックも含めた言葉なのだろう。
 食べ物屋さんの客あしらいは味の内だと思う事が多い。私はお蕎麦屋さんを中心に数多くのお店に入っているが蕎麦の美味しさが半減してしまうような客あしらいの悪い店がある。私が悪い客かもしれないし、相性というものもあるので、客あしらいの悪い所は描かない。自分勝手に私が気分のよい「あしらわれ方」をしてくれる人たちを思い出すとこんな共通点を持っている。店主が蕎麦打ち職人である店を例にとると…、
 蕎麦打ち職人の打つ蕎麦にお店のみんなが誇りを持っている。
 店主が自分の蕎麦に責任を持って客に供している。
 お店の人たちが自分の良いところを大切にしてお客に接している。
気は遣ってくれるけれど無理はしていないのである。お店としてやるべき事を自分の人柄でやってくれると、こちらも気が楽になる。気詰まりなところでの食事は美味しくない。変な日本語や無理な作り笑顔、慇懃無礼も含めて馬鹿丁寧な応対は食事を不味くし、後味も悪くなる。詰まるところ人柄とチームワークなのであろう。続く